ことのは

物語の感想文がメインです

ファンタジー小説の文章を味わう

私にとって、読書は味わうもの。

設定やキャラクターやストーリーももちろん大切だけど、文章そのものの美しさ、テンポのよさ、統一された世界観が好きです。

私が、マンガやアニメやドラマではなく、小説を読むことを趣味にしているのは、まさにそこ、だと思っています。文章を味わえるのは小説だけだから。

ファンタジーの文章を味わう

私は小説の中でもファンタジー小説が好きです。現実を離れ、想像の力をめいっぱい駆使して、物語を楽しむことができる。
ここで私にとって大切なのが、文章です。

ファンタジーは、多くの作品は現代日本を舞台としておらず、別の時代、別の国、別の世界で展開されます。当然、その物語の登場人物たちが現代日本語で話しているはずはなく、著者による現代日本語訳が行われた、ある意味「翻訳本」だと思って読んでいます。

もちろん、現代日本人に伝わればよいのだから、最新の現代日本語を使ってもいい。「推し」がいても「電子レンジみたいな調理器具」があっても「陰キャ」「パリピ」がいても、なんなら「織田信長のようなカリスマ性」と書かれていても、それが著者の選んだ訳文ならそれでいいのです。(どうしたって現地語の原文ママにはならないのですし)

ただ、私の好みは、物語の世界観が味わわせてくれる、独自性のある訳文です。
中世らしさやファンタジーらしさを出すためにカタカナを使わない。架空の江戸時代を舞台に歴史小説のような言葉選びをする。あるいは、魔法やSFなどの現代日本語に存在しない翻訳不可能な現象を表現する言葉を創作する。

著者は、それらが統一された(あるいは複合させた)その物語専用の日本語を作り、その言葉でファンタジー世界を表現します。
ある意味、一つの言語を創りあげている、と思うのです。

それらが統一されないと、コーンスープの隣に刺身がある、みたいなチグハグした味わいになってしまいますが、著者により統制された言葉の世界観の中で展開される物語、そして文章は本当に素晴らしく、そして美味しい。

その物語を最大に表現するための日本語で紡がれる物語を味わえるのは本当に幸せなことです。

パッと思いつく、私にとって文章が(もちろんそれ以外も)味わい深いファンタジー小説は、
・図書館の魔女シリーズ(高田大介)
十二国記シリーズ(小野不由美
デルフィニア戦記シリーズ(茅田砂胡
・童話物語(向山貴彦)
ドグラ・マグラ夢野久作
などでしょうか。

もちろん他にも、素敵で美味しい物語はたくさんあります。

海外ファンタジーを味わう

海外ファンタジー作品の翻訳作品も好きです。

訳者の方が、異なる文化を持つ著者が描いたファンタジー作品を日本人読者に伝わるようにと苦心して日本語訳し、さらに世界観を適切に表現する言葉選びをして完成させるわけです。
ちょっと気が遠くなりますね。

でも、そのおかげで私は、小公女や秘密の花園、ああ無情、巌窟王ナルニア国物語ハウルの動く城などの作品に出会え、異なる文化と、それを表現する文章をたっぷり味わうことができました。

ただ、海外文学は純文学やミステリーが優先して入ってくるので、ファンタジー小説にはなかなか出会えないのが残念です。